また、山野さんがI社長を殺して奪ったという小切手の移動経路にも大きな疑問があります。
判決ですと、経験豊かな不動産業者であるはずのI社長が話を聞いた翌日に、現場も見ずにそして連休で登記簿を確かめることも出来ないのに、3,000万円の小切手を手付金として持参したことになっています。
そんな不自然な取引がありえるでしょうか?
また、山野さんの「自白」では「財布の中に二つ折りで入っていた」とあるのに、警察に押収された小切手には折り目がありませんでした。
またその小切手は高額取引で使用される銀行自己振出小切手ではなく、普通小切手でした。
さらに

図Cに書いたように、23日にT専務に小切手を渡してH銀行で換金させたということは時間的にほとんど不可能に近いことです。
3,000万の小切手は判決がいう山野さんが持ちかけた土地取引話とは関係なくD社側の事情で振り出されたものでしょう。
当然、山野さんはI社長が3,000万円の小切手を持ってやってくるなどとは夢にも思っていませんし、その小切手を奪う計画を立てていた、などということも考えられないことです。
すなわち架空の土地取引で金を用意させてそれを奪おうという計画的な強盗殺人はなかったのです。
山野さんのU社は、I社長のD社に対して、架空の土地取引話とは無関係に、以前から共同事業の利益の正当な分配を求めていました。判決では無視されましたが、その交渉のいきさつについての証言もあります。
そのことが原因の口論の中で、スポーツが得意で血気盛んなIさんにバットで襲われそうになった山野さんは、不幸にもIさんを死に至らしめることになったのです。
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◎第二の事件について
もちろん不幸な事件とはいえ、山野さんは自首すべきでした。しかしT専務が、社長不在にもかかわらず5,000万円もの金を引き出すのを見て、山野さんの心に「T専務を抱きこんで事件をうやむやに出来るかもしれない」という妄念が芽生えてしまいました。
そして売り出し中の建売住宅でT専務と互いの弱みの隠蔽工作を話し合おうとしました。

図Dに見るように、現場(売り出し中の建売住宅)は琵琶湖沿いの観光地にあり、国道から200mしか離れていない住宅です。
犯罪を予定して他人を誘うのは危険すぎます。
販売中であり工事のための職人の出入りもありました。
しかもT専務は山野さんと図Dの住宅に行く途中で会社に電話をしています。山野さんに殺すつもりがあったならばそんなことを許したでしょうか?
殺意も計画性もなかったことは明白です。山野さんはT専務とうまく話をつけるつもりだったのです。
しかし山野さんは第一の事件でI社長を死に至らしめたという負い目があり、T専務は5,000万もの金を社長不在の間に動かしている負い目があったでしょう。
心に落ち着きを失っている者同士の話し合いがうまくいくはずもありません。疑心暗鬼からT専務は自分も殺されると錯覚し、またもや不幸な結果となってしまったのです。
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